パエリヤ、イカパスタ、イカリング、イカの煮付け、イカの天ぷら、イカそうめん‥等々、和洋中を問わず日本人の食卓にはイカがよく使われます。それもそのはず、一年間の日本人一人あたり生鮮イカの年間購入量は、3位のサケ、2位のマグロを押さえて約1.23kgと堂々の第一位。本当に親しまれている食材なんですね。今夜のおかずにあなたも、イカはいかが?

九州最北端。本土から132km、韓国まで約50kmという国境の島、対馬でイカ漁を取材いたしました。 

16:00 出港

 イカ漁で有名な対馬は福岡空港から30分、長崎空港から35分のところにあり、釜山港からも船で1時間10分で到着します。対馬は岩山が多く緑がきれいで、海の水は透きとおっていて神秘的なくらいです。
 島は厳原町、美津島町、豊玉町、峰町、上対馬町、上県町の6つの町からなっています。今回イカ釣りの取材に訪れたのは「千尋藻の蓮痕」が観光名所のひとつの豊玉町です。
 午後4時にいよいよイカ釣り漁の出発です。18tの「静海丸」に乗り込みます。操縦席には海上の状況を把握する為のレーダーや、プロクターと呼ばれるGPS機能による海上地図、交信機、コンパスなどが配置されており、季節や潮の流れ、月の満ち欠けなどを参考にし、長年の勘を頼りに魚探知機からの魚の反応を見て船はイカを求めて進んでいきます。イカ釣り漁は通常午後3時〜4時頃出港し漁場はその時々で変わります。




「千尋藻製氷工場」。イカを冷やすための氷はここで作られます。 淡々と船に氷を積み込む少年は、17歳。

18:30 点灯―漁開始

 まず最初に、釣ったイカの鮮度を保つための氷を仕入れに千尋藻製氷工場へいき、それから漁場に向かいます。今回は港から約2時間の所にシーアンカを海に投げ入れ船を停止、船にまばゆいばかりのイカ寄せライトを灯します。午後6時30分にいよいよ漁の開始です。船には左右10個合計20個の自動イカ釣り機があります。そこに巻かれた釣り糸には約40cm毎にイカ角(疑似針)がついていて、それを今回は水深98mに設定し自動作業で垂らします。後は、これを巻き上げて垂らしての繰り返し。イカが明かりに寄ってくると思っている人も多いようですが、実は明かりにプランクトンが集まり、それを求めて小魚が集まり、さらにそれを食べにイカが来るのです。これにあやかってカモメも寄ってきます。漁の仕組みはイカ角に抱きつくようにひっかかったイカが、巻き上げられると同時に針から外れ、船の中ブチにある溝に落ち、そのまま丸ごと流しそうめん状態で、氷箱詰め作業場まで流れていくようになっています。流れていく間、イカたちは墨をはき、そしてキューキューと鳴きます。最後の抵抗は奇妙なハーモニーとなって船内に響きました。




明かりの点灯が漁開始の合図。昔は松明、そしてランプ、今は電灯。イカ釣り機から飛ぶように釣りあげられ、集められたら、キレイに洗います。

2:00 漁終了

 漁は天候さえよければ毎日だいたい朝6時頃まで通算15時間位続きます。今回の漁は午前2時終了。20cm台のスルメイカ22ハイ入りが18箱と、25cm台の20パイ入りが3箱の収穫でした。冬はスルメイカ、春はヤリイカ、夏は剣先イカがよく釣れます。船の上では釣れたばかりのおいしいおいしい対馬のイカを、お刺身でたっぷりいただき最高でした。それと同時に漁の大変さをカラダで実感。イカが美味しいはずと納得。ぜひ今夜、イカ料理を召し上がってみてください。



大切なイカたちの荷下ろしの後、イカを箱詰め。傷つけないように気をつけながら、大きさで分けていく。

引き続き生産者市場として全国一の水揚げ高を誇る福岡市鮮魚市場へ。売り手と買い手、壮絶なセリの狭間に釣られたイカは何を思う? 

16:00 出港

 福岡空港から車で20〜30分、博多漁港に面して福岡魚市場はあります。この一千億円市場の巨大な魚市場には、まだ真っ暗な午前2時にはもう既に日本の各地から魚が集まってきています。
 発泡スチロールの四角いケースに、氷と魚が詰まっています。その上には船の名前が書かれた紙が置かれています。
 赤カマス、赤ムツ、かなぎ、太刀魚、黒ムツ、水カレイ、有名な関サバ関アジ、その他たくさんの種類の魚たちが所狭しと並びます。午前3時になるとサイレンが市場に鳴り響き、けたたましい笛の音がいろいろなところから聞こえ始めます。
 いよいよセリのスタート、早朝3時セリの時間に合わせて人がどっと増え活気づきます。市場内の人は皆帽子をかぶっていて、「赤い帽子」は仲買人、「白い帽子」はセリ人、「紺の帽子」は市場関係者でセリの免許のない人です。
 魚が並んだブロックをセリ人が順々に列を回って競り、競られた魚は次々と仲買人のターレーに積まれていきます。ひとセリはものの5分位で終了してしまいます。
 市場敷地内の別の場所では、特種低温売場があり、各地から届く貝類やエビなどの甲殻類が競られています。声を張り上げ緊張感漲る市場で競られた魚たちは、どれも新鮮で本当においしそうでした。







 text=編集部 photo=菊池陽一郎

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