中島水産株式会社社長 中島明

 現在、海外四カ国目の出店準備を進めております。
 平成7年に初めてシンガポール高島屋に出店して以来、既に三カ国に出店をしております。業績はいずれも順調に推移しています。以前にもこの誌面でお話させて頂きましたが、シンガポールでは、開店時、すしをお買い求めになられるお客さまで大変な行列ができ、すしの製造個数はギネスものとも言えるような記録を達成しました。今や、すしは、シンガポールの人々にとっては、身近な食べ物として普及しております。また、シンガポールの店は、現地の日系駐在員家族にとって、欠くことの出来ない存在の店になっています。
 なぜ、そのような存在の店になったのでしょうか?それは、探求心とネットワークの賜物であると思います。すしを一個三十五円で売ることは、普通のことをやっていては実現できません。そこで、先ず、シンガポール人が絶対に「生」では口にしない魚を使って、すしに出来ないか色々と試食を繰り返しました。シンガポール人は驚いておりましたが、その中から商品化できたものもありました。色々なお米も試してみたところ、味覚、食感でカリフォルニア米を採用しました。問屋を通したのでは、利益が確保できないので、商社にお願いして米国から直接輸入しました。こうした細かいことの積重ねが、成功に結びついたものと思います。
 その後、マレーシア、台湾へ、シンガポールの成功体験をもとに出店し、いずれも上手く行っております。だが、実際はそう簡単に出来たという訳ではありません。マレーシアで人口の70%を占めるマレー人は、生の魚は食べません。当然、従業員でも食べません。そこで、対象を少ない中国系の人々と日系駐在員家族とした営業を行って、成功しています。
 一方、台湾では、日系人の比率が小さいので、現地の方々を対象とした商売を行っています。日本食が好きな人が大変多く、また所得水準の高い人々が数多く台北には住んでいます。他の二カ国よりも日系社会の規模は小さい中で業績は順調に伸びております。
新しい国、地域に出店する場合は、綿密に市場調査を行い、このように対象顧客明確にし、価格帯、嗜好などを十分に理解、認識したうえで、出店を準備します。そして、開店後、不都合な部分が出てくると直ぐに修正をします。これを何度も繰り返し行い、その地域にあった品揃えを実現していくのです。
 現在準備中の四カ国目の出店も、同様な調査を行っているところです。今回は、既に持ち帰りすしのビジネスが行われている地域に参入しますので、従来以上の難しさがあります。普通にやっていたのでは、新規参入する意味がありません。現地で既に事業を展開している業者よりも、品質、品揃え、価格などで、はるかに評価される商品を提供するつもりです。現地の既存業者が、あっというようなものを提供します。
 それが、中島水産の存在意義であり、これからも新しいことに絶えず挑戦してまいります。

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