ここが、大自然の中にある松元養鰻場


水車を回して、水中に酸素を送る。


餌に群がるウナギたち


大きさごとに選別中
 鹿児島空港から車で約一時間半、大隅半島の中央に位置する曽於郡大崎町に(有)松元養鰻は存在します。ここは、先代から35年続く老舗の養殖場。養殖プロセスは徹底されていて、ウナギへの愛情が確実に伝わってきます。                       
 敷地の中には、いくつものビニールハウスが連なって存在し、その中には成長によって選別されたウナギたちが泳ぎ回っています。50〜60m地下の水を汲み上げた地下水の水温は、集中管理室で28℃〜30℃に保たれています。5台の水車が勢いよくまわり、休むことなく酸素を供給しています。  
 餌は、朝6時と夕方4時30分の2回、ブラウン系とホワイト系を配合させた物を与えます(いわしなどのすり身は「ブラウン系」、スケソウタラなどの白身は「ホワイト系」の色をしているところから由来しています)。イワシなどの魚粉に、漢方、水、スケソウタラの油分を加えしっかりと練り合わせて作ります。また、抗生物質等の薬は一切使用せずに育成しています。
 同じ時期のウナギでも、時間が経つにつれ大きさが不揃いになってきます。大きいウナギと、小さいウナギは別にしなければ、差が生まれたまま育ってしまいます。そこで、選別作業が行われます。各水槽の水をパイプで繋ぎ、池の水ごとウナギを取り上げて選別池へ集めます。そこから、選別機へウナギを移動させ、選別作業が行われます。大きさごとに仕分けられたウナギは、再度、水槽に戻されます。不思議なことは、小さいウナギを集めた水槽の中でも、その中からまた大きい者が出てくることです。この作業は、出荷するまで最低でも5回は行われ、かなりの時間を費やしますが、肉付きを均等にさせるために必要な仕事です。
 「どうやって交尾しているのか」などの、ウナギの生態は未だ謎に包まれています。シラスと呼ばれるウナギの稚魚が12月から3月の時期に川に上がってくるので、捕まえます。こちらの養鰻場では、国内のシラスの買い付けにこだわります。
 一般的には約6ヶ月くらいですが、こちらでは約8ヶ月かけて、出荷サイズに適した大きさに仕上げます。ここでも選別機にかけ、大きさごとに専用の容器に移し、今度は水にさらします。これは、泥やニオイを取るためで、2日〜5日は続けられ、身も引き締まり美味しいウナギに仕上がります。





皮をパリッとさせるための炭火


白焼き、蒸しのあとタレをつける


スプレー状のタレを噴射する


見事な照り具合、ウナギの蒲焼き完成
 丁寧に育てられたウナギを、まずは氷で冷やします。これにより、動きが鈍くなり、作業がしやすくなります。頭に包丁をいれてから、目刺しをし背中から包丁を入れ開き、中骨や内臓を取り除きます。開きの作業は手作業でかなりの早さで行われます。一人あたり一日平均500kgのウナギを裁きます。
 裁かれたウナギは、一枚一枚、丁寧にベルトコンベアに乗せられ、白焼きにされます。この時の火加減は、炭火とガスをほどよく使い、まずは皮から焼かれます。辺り一面、香ばしい香りに包まれます。
 白焼きの途中で、雑物が人の手で取り除かれ、そのまま蒸しの作業に入ります。100℃の高温で、12分間蒸した後、蒲焼きの作業に入ります。先ず、蒲焼きのタレを全体的に絡めます。そして、また焼きの作業に入り、2回目のタレ付け作業となる、スプレーによるタレ付けをし、再度焼きます。この段階でも、充分に美味しいのですが、3回目のタレ付け作業になるスプレーでの吹き付け焼き、そして、4回目に仕上げのタレを付けて焼きあげます。焼きは、全ての行程において炭火を使用し、タレについても無添加のタレを使用しているという徹底したこだわりをもって作られています。これらのプロセスを経て、ウナギの蒲焼きは完成します。きれいに並べられた蒲焼きは、冷ましてから瞬間冷凍され、各お店へと運ばれます。
 養殖から蒲焼きの加工まで行っている所は他にもありますが、自分の所で育てたウナギだけを原材料とし加工するのは、この松元養鰻の他にはありません。それは、時間と手間がかかっても、美味しく作ったうなぎを美味しく調理し、各ご家庭にご提供したいという情熱から可能となりました。

photo:菊池陽一郎
Copyright (C) 2003 NAKAJIMASUISAN Co., Ltd.