まつおたかし◎タレント。神戸市出身。大阪芸術大学卒業後、84年に「キッチュ」の名でデビュー。TV・ラジオはもとより、映画・舞台、はたまたエッセイなど、幅広い分野で活躍。“うんちく王”のひとりとして登場するテレビ朝日の番組本『うんちくブック』、監修を手がけた雑学本『犬も猫舌』も好評発売中。
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  魚は、動脈硬化の予防にもいいから体に良いですよね。サバとかアジなどの青魚も好きですし、お寿司屋さんでは、光り物は絶対に外さないようにして食べる位好きですね。白身の薄造りをポン酢でいただいて、生牡蠣があったらそれも頂いて、それからサラダをもらうんですよ。お寿司屋さんで出すサラダ。それを沢山食べて、それから握りに入ります。
 鍋なら、鱈が良いですね。タラチリ。あとはてっちりも好き。道頓堀でね、井筒監督に、てっちりの店に連れて行ってもらったことがあるんです。ものすごく美味しかったなあ。てっちり自体、どうやって食べても美味しいから「ここがいい!」と特筆すべき名目が見つからないんですけれど。これが美味しいってことなんだな!と納得です。『人にあんまり教えたないねや』って言われて連れてかれました。素晴らしかったですよ。牡蠣鍋も好きだし、一番美味いのはアンコウ鍋ですね。アンコウ鍋のね、最後にダシがだんだん少なくなってくるでしょ? そこに、アンキモを加えてしっかり混ぜて、ネギと一味唐辛子とご飯を入れておじやにしたもの。これ食べたら「体に悪くてもいい!」って思いますね。ホントにうまい。これは、四谷にお店があります。全部、連れて行ってもらっているお店バッカリですが(笑)。アンコウはさばいたのを売ってる魚屋さんで買ってきて、自宅でやってもいいですね。ただ、普通のダシでぽん酢で食べるのもいいけど、おつゆのダシの中にアンキモ入れて…なんてのはもう、お店ならではの美味しさですね。
 小さい魚の本能的なものなんでしょうけど、大きな魚のふりをして大群で泳いでるでしょ? あれ、凄いなぁって思うんです。だれが命令するわけでもなく、右に進んだと思ったら、今度は左に全員が一斉に方向転換して、まるでどこかの軍隊みたい。そうゆうピョンって動くタイプは白身なんですよね。赤身はね、ゆっくりぐるぐる泳ぐタイプ。人間の筋肉も、瞬発力のある人と持久力のある人では白と赤で色が違うらしいです。マラソンみたいに持続する運動の人のは赤い筋肉。ボディービルダーみたいに、瞬発力を鍛えている人のは白い筋肉。魚と同じなんですね。
 仕事で色々な漁港に行きましたけど、本当に楽しいです。船の上で捕れたてを、その場で食べられるのは嬉しいです。漁師さんと一緒の仕事で嫌なのは、朝が早いことだけですね(笑)。
 以前取材で、富山県の氷見の漁港に行きました。ホタルイカなどのキトキトの魚、――新鮮なとかピチピチしたって意味です、その取材に行ったら、『明日は朝早いですよ』って言われて、旅館の広い部屋に案内されました。ただでさえ落ち着かなかったんですけれど、なんとか寝ていたら、電話で叩き起こされたんです。たしか、5時起きの予定だったのにそれより前。『港がどうこう、3,200グラムでなんとか…。』ってどこかのおばさんが早口で話していて。そんなこと、今いわなくたっていいじゃないかって思って「なんですか?」って聞きながら、目が覚めてきた。前日にかみさんが破水してたんです。病院に運んでから、僕はロケに来ていたんですね。『区の愛育病院ですが』っていうのが、早口で聞き取れなくて、港で大きな魚でも釣れたのだろうか?と思っていたら、自分の子供が産まれた知らせだった(笑)。キトキトの子供が誕生です(笑)。あの日漁港で食べた魚は、本当にうまかったですね。

撮影=岩瀬陽一
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