「ごんあじ」は、長崎県五島灘でまき網漁によって漁獲した最上質の淡い黄色のキアジを1週間から10日間、海上の生簀(いけす)で餌をやらずに活かし込んだもの。漁から出荷まで人の手に触れません。本来、回遊魚であるはずのアジですが、五島灘は比較的浅い大陸棚で十分な日光が差し込み、プランクトン繁殖率がずば抜けて高いので棲みつくようになったのです。長崎空港から車で約40分ほどのところに位置する長崎市三重町から、まき網本船、探索船(灯船)、運搬船とチームを組むダイナミックなごんあじ漁に同行しました。


ごんあじは、海上の生簀での活かし込みを経て、9月下旬から10月の上旬が食べ頃。出荷まで人の手には一切触れません。魚群を網で取り巻き、絞り込んでとるまき網漁は、多数の船でチームを組んで行われます。まき網本船に乗船して漁の様子を追ってみました。

左から探索船、本船、運搬船。ら探索船、本船、運搬船。
 

光で魚を呼び寄せるので、スタートは夜になってから。ひとまず錨(いかり)を下ろして、食事休憩。あつあつのご飯とおでん、そして味噌汁の食事をかきこみます。

船内で光っているのはズラリと並んだ魚群探知器のモニターのみ。進行方向が真っ暗でも、迷うことなく進みます。強烈な光で魚をおびき寄せる灯船を海上に発見。さらに前方左方向からは運搬船が接近。本船から運搬船に向けてロープを投げ、両船を接続します。
↑「これから光で魚を集めるよ!」すべてのライトが消されます。

網が灯船の周りを円を描くように放り込まれていきます。投げ入れた網の下部分はカーテンレールのようになっており、本船の後ろに接続されている運搬船が網を引っ張ると、網底が絞られて、巾着の形になるしくみです。


灯船を中心にして、網が張られていきます。  

本船と運搬船の間に魚が浮き上がってきました。すくい網が下ろされ、運搬船の水槽へ移します。大量の魚を積み込むのも20分ほどで終了。ホッとする間もなく、再び無線と魚群探知器とにらめっこ。この日は次の漁場に到着するも、船長が潮の流れを気にして断念。「魚の群はいるだけでは駄目。うまく網が張れないなら、別の場所へ移動するしかない」。いかに大漁を呼び込むかは船長の判断にかかっています。深夜3時過ぎから2回目の漁を開始。終了後には、とれたてのごんあじで朝食です。あら汁と共に食すのは最高に幸せな瞬間! 午前9時に帰港するも、午後には再出発。3日に1度しか家に帰れないそうです。
本船と運搬船が近づき、網を巻き上げ、
魚を水面まで上げます。
手助けに本船から運搬船に飛び移ります。
 

港からほど近い海上の生簀にごんあじたちを入れます。ここで漁獲時のストレスを解消させ、1週間から10日間活かし込みに入ります。生簀に入れている期間中は餌を与えません。自分のエネルギーを消費させることで身の引き締まったアジへと成長させる、このひと手間が重要なのです。
手前の四角い生簀にごんあじたちは
入れられます。
水揚後には、こんな立派なごんあじに!

活魚で出荷する場合は水ごと、水槽つきトラックで運ばれます。鮮魚にする場合はここで処理。手鍵で一撃を加え、針金で神経抜き。素早い作業が鮮度を保つ秘訣です。ごんあじを痛めないように1箱につき6匹入りで梱包。ごんあじシールを貼って完成です。


漁業の近代化を推し進め、「ごんあじ」のブランド化につとめた柏木水産社長の柏木哲さんのお名前にちなんで。
彼なくして「ごんあじ」は語れないのです!

【取材協力】
長崎市新三重漁業協同組合

長崎県長崎市三重町330番地
TEL:095-850-1587


撮影=菊池陽一郎
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