今回乗船した、佐藤船長を筆頭に合計9名で成る第53共寶丸(きょうほうまる)。
 毎年8月26日が定置網漁解禁日。11月末頃まで行われますが、最盛期は9月20日頃からの1カ月間。この時期に銀毛と言われる鮭が大漁に獲れるのです。
 漁場となる野付半島は潮の流れが非常に速い海域。1日1回「潮だるみ」と言う、流れが止まる時間帯があり、そのタイミングをはかって出港します。35ある定置網へは、各々経営者の組合員が3〜12名のチームを構成して漁に出ます。定置網は丘網・中網・沖網の三階網で、6月頃から3カ月かけて仕度をし、設置。網の仕組みは、鮭が壁にぶつかると下へ、そして沖に向かうという習性を生かし作られたもの。まず、みち網という誘導役の網から胴網に誘導され、そこでしばらく遊ばされます。そして再び壁にぶつかると左右に分かれ、じょうごと呼ばれる入口から金庫の網に入るようになっています。
 鮭は自然環境、とくに水と風に敏感。網は潮の流れに対しまっすぐに設置されなければ鮭が入ってきてくれません。6月の段階では流れを予測して設置し、漁がスタートしたら調整していきます。鮭が移動をするのは月の満ち欠けと関係があり、朝方か夕方。これは鮭のえさとなるプランクトンの上昇にともなうものと言われています。
 全ての網おこしが終了すると港に戻ります。
1 網おこしをするときに鮭を巻き込まないように“ハヤスケ”という道具を使い水面をたたいて、船から鮭を遠ざけます。 2 全員で平均的に網を巻き上げます。無言ながら息はぴったり。
3 素早くタモですくい、氷水が用意された船倉へ。  

港では水揚げと同時にオス・メス各5段階のランク(計10種類)に選別されます。鮭のランクは、最上級の、大きくて銀色をした銀毛と言われる「銀A」、次にやや劣る「B」、ブナ化が進んだ「BB」、そして「キズ」ものに分けられます。
1 流れ作業は、役割分担で進みます。
2 瞬時に性別とランクを見分け、選別します。 3 銀色に光る見事な鮭!
4 港でも衛生面には気をつけ、ローラーを使用します。 5 氷水に浸された鮭は断熱シートをかぶせて鮮度を保ちます。

野付の競りは各船が水揚げした場所で行われます。買受人は事前に下見をし、競り時間になると競り人と一緒に各所を回ります。kgの言い値で魚槽ごと競り落としていきます。
1 魚槽を囲んで品定め。
2 競りがスタート。一瞬の勝負にかけます。 3 オスの銀Aを野付漁協が落札。

新しい取り組み
野付漁協は常に新しいことに挑戦しています。鮮度・衛生面に細心の注意を払っているからこそできる鮭の活〆を試験的に開始しました。行程は漁の最中に船上で行います。銀色の大ぶりな鮭を選び、素早く血抜き。きれいに洗い流して氷水の入った別の船倉に入れて港まで運びます。血が残らないため、臭味が全くなく絶品の鮭になるそうです。
鮭のあれこれ
野付鮭の種類
日本で捕獲される鮭の中で漁獲量、消費量ともに一番多いのはシロザケ。野付も同じです。秋が旬ですが、捕獲される時期によって呼び名が変わり、春から夏にかけては時鮭、秋には秋鮭や秋味、通常4年で戻ってくる鮭が偶然に早く戻ってきた、稀少な未熟で脂のりのいいものを鮭児と呼んでいます。
ブナ化って何?
鮭は母川に近づくと海水用から淡水用に魚体の色を変化させます。これは産卵に対する準備。卵に脂質が取られて身が白くなっていく現象です。
魅惑のサーモンピンク
赤身のわりにカロリーが低く、栄養価が高い鮭。このピンクを作っているのは最近話題となっている「アスタキサンチン」。抗酸化作用があるため、最近では栄養面だけでなくアンチエイジング効果など美容面でも注目されています。


   
撮影=菊池陽一郎
Copyright (C) 2007 NAKAJIMASUISAN Co., Ltd.