島根県西部に位置する益田市は、飛鳥時代の歌人・柿本人麻呂や室町時代の画家・雪舟が人生の終焉の地として選んだとも言われる町。鹿足郡吉賀町・津和野町から益田市を流れる日本屈指の清流・高津川は、一級河川の中でも珍しくダムがなく、常に豊かな水が流れています。そのため鮎の餌となる良質なコケが育ち、それゆえ香り高い鮎が多く育ちます。

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高津川は六日市を源流に、本流と匹見川が合流して、益田市から日本海に注いでいます。いまだにダムのない貴重な清流で、山には広葉樹が多く、豊かな自然のおかげで、下流域でさえも清らかな水が流れています。

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解禁日は河川によって違いますが、高津川は5月20日から10月10日まで(10月11日〜11月30日までは産卵保護のため禁漁)。地元の人はもちろん、北陸や九州などからも泊まり込みでやって来て鮎釣りを楽しみます。漁場は、高津川・匹見川ならどこでも豊漁。川で釣り竿をふる様子は夏の風物詩ともなっています。
漁法には友釣りと網釣りがあります。友釣りが主ですが、それは鮎の習性を利用した手法。鮎は餌の確保のために縄張りを持ちますが、その縄張りに侵入するものには激しく抵抗し追い払おうとします。その行動を利用して、縄張りの中に、針のついたおとり鮎を侵入させて、追わせて捕獲する釣法です。
釣り人はその日に釣った鮎を漁協に持ち込み、漁協はそれを買い取ります。漁協に持ち込まれたら、1〜2晩、地下にあるいけすで寝かし、腹の中にたまった砂を出し切ります。鮎はとても繊細なので、手で触れることは禁物。また温度変化や水質変化にも弱いので、水は地下水をくみ上げ、何度か濾過し、川の水と近い状態で保ちます。
持ち込まれた翌日または翌々日に、いけすから揚げ、サイズ別に分けて、氷〆にします。塩と水道水で作られた氷水に30分ほど、動かなくなるまで浸します。塩分は冷えを保つ目的もありますが、浸透圧によって鮎の旨味を保つためでもあるそうです。時間とともに背中が深緑になってきます。 活〆鮎となったら、1kg単位で計量。袋に入れ、輸送の際にすれて傷つかないよう冷塩水を少々加え、それを細かく砕いた氷でサンドウィッチする形で発砲スチロールの箱に詰め、冷蔵クール宅急便で中島水産の各店舗に直送されます。
活〆鮎の理想のサイズは17〜20cm。地元の人によると、背ごし(骨つき刺身)などで食べるには15cmぐらいのものが骨も柔らかくちょうどいいと言います。
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撮影=菊池陽一郎
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