子供の頃、長崎の実家では鯖を生で食べてたんですよ。すぐ近所の市場に生で出てて、全然問題なく刺身にして売ってあったんで、そういうもんだと思っていたんです。しめたのって甘酸っぱいでしょ。甘酸っぱいのが子供の時嫌いで、生が一番って思っていたら、東京ではそんな危ないこと誰もしないですよね。千葉の漁港近くで揚がっている鯖でも「これ生で食べられますか?」って聞いたら、「いやいや勘弁して。危ないっすよ」って言われた。鯖は生腐れって言って足が早いじゃないですか。新鮮だったとは思うけど。鯖ってすぐ硬くなっちゃうらしいですね。東京でも柔らかい生も出ているんですよ。でもみんな用心して食べないのかも。しめ鯖はずっと嫌いだったんですけど、それは酢を甘くし過ぎてるという力加減のこともあるなって気づいて、いまは食べます。ご飯のおかずが甘いのがダメなタイプなんですよね。
 魚の中では青魚が一番好き。本当はその鯖の生が一番好きなんだけど、鰯とか鯵とかのお刺身が好きかな。鰹も好き。濃い〜ものが好きです。先日秋刀魚3匹とイカ4杯をおろしました。秋刀魚は3匹とも刺身にした。小骨多かった。大変だった。本を見ながらおろしてみたんですけど、秋刀魚は身が崩れやすいから、最初に皮をむく、って書いてあって、やってみたら、ぴーって。むけるむける、おもしれ〜って。骨は素揚げにして、カレー塩をかけて食べました。娘が気に入って、お弁当に入れて持ってってた(笑)。イカは塩辛を自分で作りますから慣れてますけど、はじめての時は、中身を抜き出した時のパワフルなルックスにびっくりして、ひえ〜〜ってなりました(笑)。
昔はたいしたことでなくてもめんどくさいと思っていて全然料理しなかった。子供が美味しいって言ってくれるとやってみようかなって思うんですよね。で、自分で作ったら結構美味しかったという。だいたいものを作るのが好きだからでしょうけれども、見るとこれ、どうやって作るんだろうって気になっちゃうんですよね。塩辛も友だちの漁師からもらって、この人が作れるんだったら私にもできるんじゃないってはじめたし。食卓に実験作が時々出るんですけど、どうなのこれみたいなこともありますよ。そこまでやる?ここまでやる私ってバカみたいって思うんですけどね。前は別居した相手が普段のご飯は作ってくれていたので、私は保存食とかお菓子とか実験班だったんですけど、いまは両方しなきゃいけないから、昔より手際がよくなっているかもしれない。もう、暮らしはほとんどババアですね(笑)。
うちだしゅんぎく◎1959年長崎市生まれ。84年より漫画家としてデビュー(「南くんの恋人」ほか)。以後歌手(CD「魔女復活」ほか)、俳優(「ビジターQ」ほか)、脚本家(永作博美一人芝居「水物語」ほか)、作家(「あたしのこと憶えてる?」ほか)、監督(鈴木砂羽主演「お前の母ちゃんBitch!」が2011年5月DVD化)として活動。93年「私たちは繁殖している」「ファザーファッカー」でBunkamuraドゥ・マゴ文学賞受賞。京都造形芸術大学客員教授。ペアーレ埼玉講師。
撮影=ひるたえみ
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