網走湖のしじみ漁は5月が解禁。資源管理型漁業を取っており、近年では年間の漁獲高を700トンと定め、再生産をしながら安定した供給が継続できるよう漁協をはじめ徹底した管理のもと行っています。
 網走湖には3つの港(呼人・女満別・嘉多山)があり、全41軒の漁師がそれぞれの港から出漁します。年間の漁獲高が決まっているので、1軒の漁師が獲れる量も定められています。この日は100キロ/日。それ以上は獲りません。
 朝の4時、一斉に漁がスタートします。時間もしっかり厳守。フライングをする人はひとりもいません。漁場は潮の流れや天候など、状況に応じて移動するそうですが、だいたい水深1.2〜3メートルのところで作業します。周囲約44キロの網走湖、資源は豊富です。
 まず、「じょれん」と言われる土砂をかき寄せ貝などを獲るための道具を海に落とし、湖底でしばらく流します。ある程度経つと揚げられるわけですが、じょれんの上部にファンモーターがついていて、それによって余分な砂などは落とされます。
 網走湖産しじみの特徴は粒が大きいことですが、規定で14ミリ幅の「トーシ」とよばれるふるいに残った厚さ15ミリ以上(殻長約23ミリ)のものしか獲らないことになっています。この規格を通るものはだいたい7〜8年もの。船に専用の選別機が搭載されており、規格未満のサイズは海に戻される仕組みになっています。さらにトーシで、海水につけながら選別。中身が空だと水面に浮き、小サイズだと自動的に海に落ちて行きます。
 選ばれたしじみは指定のコンテナに詰め替えられます。1コンテナも重量が定められており、100キロに達して終了。自宅に持ち帰って、再度選別して、仲買人へ届けます。
▲ (左)「じょれん」という装置を海に落とし漁開始。(右)じょれん上部についたファンモータで余分な砂はしっかり落とし、水揚げします。
▲ 水揚げ後は選別機に投入。隣接するドラム状の装置へ移動し、回転によってふるいにかけられ、規格品とそうでないものに分けられます。
▲ 「トーシ」に移し替え、水に通して再選別。規格外はそのまま海に落ちて行きます。
 漁師は契約する仲買人のところへしじみを届けます。仲買人の角崎商店には朝5時30分から続々と届けられ、ここでより細かい選別が行われます。見た目、重さ、音、匂いと五感をフル活用して状態をチェック。特に死貝には要注意で、健康な貝の中にひとつでも死貝が含まれると他の貝まで影響を受けてしまい、全部がダメになってしまいます。
 ネットに詰め、さらにもう一度不良品がないかどうかを確認し、「正規の網走湖産」である証明として西網走漁業協同組合発行の単票と産地シールを同梱し封をします。真水でキレイに洗い、発泡スチロールのケースに入れて、冷蔵車で出荷。中島水産に届けられるしじみは、つねにベストのもの、大きくて傷の少ないものが選ばれます。
音と匂いで死貝をチェックします。
真水に浸してかけて、しっかり洗浄。
中島水産行きのしじみには証明の単票と産地表示のシールが同梱されています。

流氷が運ぶ豊富なプランクトンや山からの雪解け水が網走湖に注がれます。この自然界がもたらす栄養価の高い自然用水が美味しいしじみの秘訣。栄養価が高いと可食部に栄養素が届き身を大きくしますが、低いと殻ばかりが大きくなるそうです。

1. ハズレしじみの見分け方は音と匂い。貝通しをあてると独特な軽い音がします。そして不快な匂いがします。あとは経験で瞬時に選別していきます。

2. しじみをよく見ると、真っ黒なもの、少し黄みがかったものが見られます。これは土壌の違いで生じる現象だそうで、味に違いはないよう。黄みがかったしじみが獲れるエリアは石までも黄みがかっているそうです。

3. しじみは氷温帯(±0℃)なら60日ほどは生きている(仮死状態)と言われます。また、砂だしすると鮮度劣化が進むのでそのまま出荷。料理のときには一晩以上砂だしをした方がよく、時間のないときはひとつまみの塩を入れると早くできるとか。砂だし後に小分けにして冷凍保存も可能だそうです。


撮影=杉山正直
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