アートで、多様性に富んだ
生態系の 楽園をつくりたい
 僕がテーマにしているのは、5億年前からいままで生物はどのように進化してきたか。そして未来の5億年先にはどうなっているか。それをアートの表現をつかって別の観点から見ていくことです。形や色にも興味があるけれど、どんな動作、挙動をするかシミュレーションして、食べたらどんな味がするかまでも考える。僕は人類が滅亡しても1割だけが生き延びるためのサバイバルのアートを考えています。太古からの生物を学んで、未来の生物を考えようとしています。天地異変のとき、どうやって生き延びるか。生き残り戦略に興味があります。1割が生き延びて次の時代をつくるというサイクルが過去5億年間の歴史。だからサバイバルをアートで研究していくと、食べることも僕にとっては生き残り戦略の表現です。
 進化は離島に行けばさらに起きる。僕の出身、種子島とか奄美大島とか、沖縄とかは天然記念物だらけ。それは島で適応して進化しているから。だから魚も南に行けば行くほど独自の色を纏っている。逆に北のほうに行くとモノトーン。そうすると味と色の関係がおもしろく出てくる。寒いところに行くと多様性は減ってしまう。植物だって北は針葉樹だけがずっとあって多様性がないけれども、熱帯のジャングルに行くと違う。つまり進化は熱帯の方で起きやすい。南にいけば多様性と味覚も増える。
 例えば、アマゾン奥地のジャングルにいるピラニア、イシダイと比べて、同じようにさっと唐揚げにして食べるとピラニアの方がうまいときがある。美味な魚になるのは進化の真っ最中にいるから。つまりは、僕にとっての「しょく」(色/食)というのはとても重要。だから、この作品はどんな味がするんだろうって必ず考える。でも、寿司のネタって、ほとんど全国一律で画一的です。ブダイとかウツボの寿司ってある? ないですよね。
 あと、カモフラージュとか擬態の話も興味がつきない。魚のキラキラする鱗はクジャクの構造色と同じ原理。なんで魚に瑠璃色に輝くキラキラがあるのかっておもしろいです。それって種の中でモテようとしたんじゃないのかな。サバイバルはいかに種族を存続させるかですから。
 最後に海の宇宙に乾杯!
かわぐちよういちろう◎独自の「グロースモデル」による世界的CGアーティストとして活躍中。8K超高精細CGによる全天周プラネタリウム映像や大型モニュメント、伝統工芸の未来化、 ロボティックな立体造形の創出。ヴェネツィア・ビエンナーレ’95日本館代表作家。2010年ACM SIGGRAPH国際大会ディスティングイッシュト・アーティスト・アワード、2013年芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章を受章。
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