魚を好んで食べるようになったのは大人になってから
 僕は、魚って気持ちが悪くて触れないんです。高校の同級生が逗子で釣り船屋をやっているんですが、落ち込むとよく彼のところに行くんです。船酔いは一切ないので、どんなに沖に行ってもどんなに船が揺れてもそれが楽しくて。船の先頭で波がダーンダーンってなるのを受けるのは最高です。若大将になった気分(笑)。でも、魚は気持ちが悪い。だから、魚がかかって、うわーっ、キタキターってなっても、ぬるぬるしてるから最後はダメ。魚に引かれた、あのピクピクってくる感じは好きなんだけど、あとはその友人に任せちゃう。子供の時も父が釣り好きだったので、横浜の富岡海岸でハゼはいっぱい釣りました。家に帰ってきて唐揚げにして食べるんです。とても美味しかった。でも触るのが嫌で、うえぇっうえぇって言いながら釣っていました。金魚だって持つのは気持ち悪い。って、持つもんじゃないですね(笑)。
 食べる魚がちゃんと好きだって思えたのは大人になってからかな。社交的じゃなかったし、お酒も飲めなかったしね。でも47を過ぎて、みんなと食事したり酔っ払うことがこんなに楽しかったんだって知ってね。子供の時は、アジフライにブルドッグソースをかけたやつが大好きで、コロッケより好きでしたね。本当に美味しかった。あとはブリの照り焼きを大根おろしで食べるのも好き。行きつけの店というのはすごく照れますが、名古屋に行くと必ず行く竹亭という老舗の料理屋があって、そこの鯛めしはめちゃくちゃ美味しいです。その時だけはちょっと日本酒を飲んじゃったりしてね。お寿司を美味しいと思ったのは50を過ぎたぐらいから。なんか、お寿司やさんって怖いイメージがあってドキドキしちゃう。若い頃、三浦友和さんにお寿司やさんに連れて行ってもらったことがあって、僕が注文したら大将に「順番が違うんだよ」って言われて。とってもあせりました。すると友和さんが静かに「竹中が食べたいように食べたらいいんだ」って言ってくれて、「もう出よう」ってお金を置いてスーッと出て行った。本当にかっこよかった。でも、この時のことがずーっと残っているのかな、かしこまった寿司屋はいまだに苦手。緊張して食べるのって味も半減しますからね。
たけなかなおと◎神奈川県生まれ。1983年に『ザ・テレビ演芸』(EX)でデビュー。俳優や映画監督、ミュージシャンなど幅広く活躍。91年の『無能の人』で映画監督デビュー。同作ではヴェネツィア国際映画祭 国際批評家連盟賞を受賞し、2013年の『R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私』まで7作を監督している。著作に『少々おむづかりのご様子』(角川文庫)他多数。
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