おさかなぶっく史上、2度目の明石は6〜7月が旬の真だこを求めて、 いまでは希少となってしまった蛸壺漁に同行しました。
そして、中島水産神戸元町店へ潜入。
漁から店頭まで、関西経路の一連の流れを取材しました。
奥に見えるのは明石海峡大橋。左手方向が本州で右手方向が淡路島。

 明石が蛸壺漁の発祥という説もあるように、かつては定番の漁法でした。しかし現在では底引き網漁が90%以上を占め、希少な漁法になってしまいました。
 今回訪ねた漁場は、岸辺付近の水深5〜6mのところと、明石海峡大橋下付近の100m深のところ。海流が強い場所で育つ明石のたこは筋肉質で足が短く太いのが特長です。
 蛸壺は1本の縄に4尋(ひろ)*=約7m間隔で、150個が連なっています。平らな面が地面につくよう置かれ、レンガなどの重石と一緒に沈められています。
 漁は、つながった蛸壺をローラーで巻き上げ、ひとつずつ確認します。入っていたら取り出して船内の水槽に入れて、蛸壺は海に戻す、をくり返します。
今はプラスティック製の蛸壺が主流。陶器と違って割れにくい。
なかなか取れないときは棒などで壺を叩いてびっくりさせます。
*1尋は両手を左右に伸ばした時の指先から指先までの長さ。釣りでよく使われる単位。
 壺の中を覗いてみると、たこが壺の壁にしっかりと貼りついています。海の中では、たこは鯛やふぐに狙われる危険性があるので(足は食べられても再生する)、石をつかんで自分の身を守る習性があり、石を抱えて揚がることも多いようです。たこは、船内の水槽に入れて生かしておきます。
 港に戻ってくると、船から海中に垂らした「ちょうちん」と呼ばれるネット状の水槽に移します。たこは生命力が高いので、ある程度、数がたまったら市場に持って行きます。

■シャイ!?なメス?
■実はキレイ好き
外敵から身を守るためではありますが、狭くて安全な穴ぐらを好むたこ。その習性を利用したのが蛸壺漁ですが、船の上でも穴の中に。ちなみにこのたこはきっとメス。吸盤の大きさが揃っているから。ところどころ大きいのがあるのがオスなんだそう。
なんとなく、ぬるっとしている容姿からそうは思えないのですが、実はキレイ好き。壺に牡蠣やフジツボなどがくっついていると入らなくなるので、ときどき掃除をしなければならないとか。(奥はBefore、手前はAfter)

 明石といえば、子午線、明石海峡大橋、明石焼き(現地では玉子焼きと呼ぶ)などが有名ですが、昼網も名物のひとつ。
 昼網とは、明石市公設卸売市場の分場で11時30分より始まるせりのことで、明石で水揚げされたものに限定。朝のせりとは差別化されていて、ほとんどが近隣で消費されます。
 買い付けは、挙手をして、指サインを送ります。そして値段と購入者が決定します。
 昼網の商品は中島水産神戸元町店へも届けられ、加工の必要ないものは即座に店頭へ、たこの場合は店舗内でボイル加工され、並びます。

「明石の桜鯛」でもお世話になった角谷さんは「明石のたこ」関西展開も手がけられています。おさかなを愛する彼の目利きこそが絶品の要!
漁に同行させてくれた阪田さんは代々漁師の家系に生まれながら、土木関係のサラリーマンでした。しかし10年前に脱サラし、漁師を継ぐことに。「網に比べれば手間がかかるけど、蛸壺に入るたこは大きいから」と(たこは目方換算)、蛸壺漁を続けているそうです。

 店で行う加工は半生と完ボイルの2種。たこは活きたまま届くので、人間でいうところの首のあたりの神経を手カギで一刺し。締めて内臓を取り出します。
 次に塩をたっぷりとまぶし、表面をまんべんなくしごきます。これがいわゆる「塩もみ」。ぬめりと白いアクのようなものが出てきますので、この塩もみを徹底的にやらないとボイルした時に皮がずるずるにむけて美味しくないものに。足と足の間、特に股の部分は丁寧に作業します。もむ作業は皮がむけないようにするためと、もむことによって身が引き締まるというメリットがあります。
 ある程度ぬめりが取れたら水洗い。次は、なにもつけずにぬめりが取り切れるまでもみしごき続けます。塩もみ作業は半生でも完ボイルでも必ず通らなければならないステップ。2種の違いはボイル時間の違いだけです。
 次はボイル。湯がグラグラするかしないかぐらいの時に入れます。熱すぎるとダメ。皮がむけてしまう可能性があります。少しずつ、足がキレイにまるまるように投入し、様子を見てひっくり返します。時間は約10分。これが完ボイル。半生の場合は皮だけをボイルする感じ。生だと吸盤が噛み切れないからというのと、殺菌効果も兼ねて必ず湯にくぐらせます。 氷水にあげて、粗熱が取れたら冷蔵庫に。刺身用、生食用、ボイルとして販売します。
この小豆色が明石だこの色。


撮影=菊池陽一郎
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