大先輩
 おさかなの話っていうと、まずは、今年の24時間テレビでTシャツのデザインをしたあとに、「釘のない海の家」(日本財団)をつくるプロジェクトに関わりました。建築家がドームみたいな建物をこどもや学生とつくったんです。そのときに24時間テレビと同じグリットを使って、さかなの絵を描いたんですよ。三角と四角の組み合わせから、タツノオトシゴとか鯛が誕生して、みんなで描いて。ものすごく盛り上がりました。
 あと、いつもすごいなって思うのが鯖寿し。ひとりで新幹線に乗るときは必ず鯖寿司を買うんですが、実に見事だなって思うんですよ、あの鯖のパターン。とにかくきれいだなと。あの紋様はなんのためかわかりませんが、あり続けているわけだから、絶対に必要なものなんでしょう。あれには憧れるというか、大先輩ってところです。破綻していないし、もうちょっとこうしたらいいんじゃないというのがない。僕にとっては完璧という感じです。鯖同士でお前のパターンすごいなとか俺の方がかっこいいじゃんって見合うことあるのかな(笑)。自分が紋様で仕事をするようになってから再び、すごいんだなって思いました。美しいもの、残るものをつくりたいですからね。しかも、あの紋様は、指紋と同じでおそらく全部違うパターンだろうと思いますし、存在自体が純然たる事実。とにかく本質的なんですよ。本質でないものって必ず違和感があるだろうし、結局、理にかなっていないものは淘汰されちゃうと思うんですけど、これは残っているわけだから、絶対に勝てない世界だと思っています。ところで、料理人が食材を選ぶとき、肌ツヤとか弾力とかももちろんだけど、いいパターンだなぁって選んだりしないんですかね。また食の話ではないですけど(笑)。
 もちろん食べるのも好きです。食べるのが上手らしいです。自分自身はきれいに食べたいっていうより、全部食べたいって感じですけど。こどものころって、親が骨から外して出してくれたりするじゃないですか。だから、はらわたが食べられた日ってなんか大人デビューの日って感じがして、だったらきれいに食べてやろうって思い、いまに至ってます。先日も秋刀魚の塩焼きを食べたとき、ありがたいと思いましたね。さかなって、骨も美しいですからね。
ところあさお◎幼少時より建築を学び、江頭慎に師事。2001年9月11日より「繋げる事」をテーマに紋様の制作を始め、美術、建築、デザインの境界領域で活動を続ける。単純な幾何学原理に基づいて定規やコンパスで再現可能な紋と紋様の制作や、同様の原理を応用した立体物の設計/制作も行なっている。主な作品に、大名古屋ビルヂング下層部ファサードガラスパターン、東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレム、「大手町パークビルディング」のための屋外彫刻作品などがある。
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