りきや◎1946年東京都生まれ。GS「シャープホークス」を1966年に結成。後に「自動車泥棒」で俳優業にも進出。その後 CX「オレたちひょうきん族」での「ホタテマン」はあまりに有名、幅広い年齢層から人気を得る。ドラマ・バラエティ・映画・GSコンサートをこなす一方で近年は舞台にも精力的に取り組む。
  食材にしてもお酒にしても旬のものは味が違うね。旬のホタテは、もう最高。色んな食べ方があるけど、やっぱり生が一番。北海道で、とれたてのホタテを船上で洗って、海の潮味だけで食べた事があるけど、これは最高だったね。牡蠣みたいに、タバスコとトマトピューレ、ブラックペッパーをかけて、少しだけビネガーを垂らしても美味い。シンプルに、網の上で焼くのも良いし、バターで焼いて塩胡椒を振り、最後にレモンをキュッと絞って、湯気がでている間に食すのも香りがたまらない。ライスペーパーで巻いて生春巻きにしても、そこにレモングラスや千切りにしたピーマンを加えて醤油やナンプラーで味つけして揚げても合う。ほぐした貝柱に、スライスしたキュウリと玉ネギを敢えて、ビネガーを加えたサラダも美味い。サラダには、ピーナッツを細かく砕いて振りかけると歯ごたえも抜群だよ。乾燥した干し貝柱はスープにもなるし、かじっただけでも旨味があってなんともいえない。とにかく色んな国の料理が楽しめる素材だね。揚げ物なら、パン粉だけではなくクラッカーをつぶして作った大きめの衣をつけてサッと揚げても、春雨を油の中でジュっと揚げた物に八宝菜風の中華あんをかけてもいけるよ。具は、ホタテ以外に、空豆、ヤングコーン、あとはエビやイカを入れてね。エビとホタテと卵のチャーハンや、オムレツにほぐした貝柱を入れても良い。缶詰のホタテを使った時は、その汁は、絶対に捨てないでほしい。いい味が出てるからね(笑)。これでお米を炊いたら美味しいはず。きのこと一緒にホイル焼きにしても良いし、蒸すのも良し、揚げても良し、出汁も美味いと万能素材だよね。
 京都風は上品だよ。空豆を裏ごしてペースト状にした物に、山椒や木の芽を少し入れて、柚胡椒を練って加えたソースを貝柱にほんのりと塗って炙った一品。お洒落だよね。この店はかすかに水琴窟の音が響き、ほのかに蚊取線香の香りが漂っている落ち着いた雰囲気の京都のお茶屋さんだった。料理は、お皿によって味がより引き立つからね。先付けや八寸のような、小降りの入れ物に少し入っているお料理が印象に残ったりする位。骨董ではなかったけれど、旅先で面白い小鉢を買い集めたりして、家も皿には凝っていたよ。
 産地で食べると食が進むよね。以前、サンフランシスコで俺一人で80個の牡蠣を食べた事があるよ。持参したMYポン酢で味付けしてね。『力也、お前はちょっとクレイジーだ』って言われたけど(笑)。今は海外でも、醤油があるけれど、持ち運びは簡単だから好きな調味料は持っていくと良いよ。新鮮なものを現地で食べるのが最高だからね。
 やっぱ、その土地のものが好きなんだよね。産地で美味しい食材に出会って、(東京に)送ってもらって家で食べてみても、(産地で食べた時の)素材一つ一つがもっと引き立ってた感じと何かが違う。美食家の北大路魯山人は、そこを追求していたんだと思うよ。そこの土地の匂いだとか空気、そして水や風の音。何より、その土地の人との交流が関係してるんだろうな。魯山人からは、最高の文学や哲学みたいなものが感じられる。彼の、そういった五感で感じて食している生き方は、本当に、憧れるね。

撮影=岩瀬陽一
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