北国の朝はとても早くに訪れます。ほたて漁へ向かう午前4時には、既に太陽が顔を出し始め、出港を優しく見守ってくれています。猿払のほたて漁は、3月に海開けをしてから11月末まで続きます。ほたての稚貝を海に放ち、あとは海の中で大きく育つまで4年間見守ります。「輸採制」と呼ばれる方法を用いて、漁場を5区画に分けて毎年順番に使います。他の組合で採れる4年貝に比べて、猿払の5年貝は一回り大きく弾力がかなりあります。6〜9月が最盛期で、八尺と呼ばれる熊手付きの袋網を海に投げ込み5分も引き回すと、ほたてが水揚げされます。クレーンで引き上げられるほたての迫力には、おもわず息を呑んでしまいます。

午前4時、いざ出港。清潔感が漂う美しい船で沖に出ます。 熊手のついた八尺と呼ばれる網を投げ込み待つこと20分。あっという間に沢山のほたてが揚がります

クレーンで引き上げ船内へ。このボリューム感、迫力はたまらない!2丁の八尺で3〜4t採れます。 水揚げしたほたては、ポンプで汲み上げた海水で洗いながらすぐに船上選別を行います。小さいものは海へ戻し、違う種類の貝や天敵のヒトデは、別のコンテナに集めます。とても丁寧な仕事ぶりです。

 猿払の海の底には小砂利の層があり、これはほたての成長には絶好の環境です。貝殻が大きいうえ貝柱は肉厚でお味は濃厚!
 繊維質がしっかりとしたつくりで、口にふくむと適度な弾力が感じられ、甘いうまみが口中に広がります。猿払のほたての一番の特徴は、その大きさ。3年〜4年で出荷する他に比べて、ここ猿払では5年間育てます。稚貝を海に蒔いてから、時がほたてを育むまでじっと待つこの方法は、養殖貝というより天然貝に近いといえます。タウリンを豊富に含み、高タンパクで低カロリーの万能食材と言えるほたて貝は、こうして育まれているのです。

これが八尺(熊手付きの袋網)。昔は長さが「八尺」あったからその名になったとか。ここ数年は、出来るだけほたて貝を壊さないで収穫できるように熊手に弾力性を持たせた物が主流になってきています。 陸に戻ってくると、今度はトラックへほたてを積み込みます。大量のほたてがトラックへ流れ混むとき、ザックザックと大判小判のような音が響き渡ります。


この大きさ! 右側が4年貝で左側が5年貝。このボリューム、この迫力、素晴らしいです!

猿払村漁業協同組合 阿部義政さんのお話 
 猿払とほたての関わりはかなり古く、松浦武四郎の『武四郎廻浦日記』によると、「安政3年にサルプツに、海は、海扇(=ほたて)、ホッキが多し』と記されています。遠浅の海は、昔からほたてにとって棲みやすい海だったわけです。ところが、やみくもに採り続けているうちに、海からほたての姿が消えて行きました。窮地に立たされたその時に、猿払村漁業組合の太田金一6代目組合長が大英断を下しました。沢山の稚貝を一度に海に放つ「大規模放流」を行ったのです。これが成功して今日があります。今ではオホーツクにある漁業組合の中で、猿払の出荷量は一番になりました。その教訓を元に「自分たちの海を知るべきだ!」との思いで、漁船以外にもあさひ丸という試験船を設けて、地形を調査し海図を作りました。専門家がデータを元に日々研究しています。これにより、ほたてにとって棲みやすい海を守っているのです。


 猿払では、前浜で採れたばかりの新鮮なほたてを、殻ごと出荷する物、冷凍加工する物、干貝柱にする物と用途によって分けて運びます。トンネルフリーザーで瞬時に冷凍されたほたての貝柱は、解凍すれば美味しさはそのままの上、生のようなコリコリ食感も堪能できます。
前浜で水揚げされたばかりの新鮮なほたて。まずは、殻から外し、ひもの部分も取り除きます。 トリミング作業。ひとつひとつ、丁寧に人の手で付着物を取り除きます。この一手間が安心・安全。
この見事な、ほたての貝柱。鮮度が落ちないように、作業用の水は全て殺菌海水を使用します。 ひとつひとつ貝が重ならないように、丁寧に並べていきます。新鮮な貝ほど、殻から外すと斜めになります。
いよいよ冷凍します。−40℃のトンネルフリーザーで20分かけて、急速冷凍にかけます。 大きさ毎に選別したら、パッキングして出来上がり。みなさまの食卓へお届けいたします。

荒い海で鍛えられた貝柱は身の締まりがよく、海外でも高い評価も得ています。しっかりした繊維質は、干すとくっきりと浮かび上がります。生の物と比べるとたんぱく質は3.5倍、リンは46倍と旨味だけではなく栄養価が豊富な食材です。これは北海道の乾いた太陽の恵によるものです。
浜から揚がったほたて貝は、直ぐに塩水で茹で殻から身を取り除きます。 茹で上がった貝柱。この状態はプリプリしていてとっても美味しい。
後は、北海道の大空の下、丁寧に並べて乾燥させます。その後、室温の低いあん蒸室でゆっくりと寝かせます。この干す作業と寝かす作業を数週間かけて、繰り返すと美味しい貝柱が出来上がります。 これが完成品。かじると甘く豊かな風味が口の中に広がります。




天然温泉 ホテルさるふつ ふるさとの家 レストラン「風雪」
北海道宗谷郡猿払村浜鬼志別214-7 国道238号さるふつ公園内
TEL:01635-3-4314

左. さるふつ定食 ¥1,260
さるふつ鍋(地元の牛乳とお味噌をあわせたタレを使用)、ほたての塩焼き、ほたてのお刺身、名物ほたてのり、あえもの、ごはん、みそしる、お新香と、ほたてづくしでこのお値段!

右.
特製ほたてカレー ¥1,000
「干貝柱のもどした汁でルーを溶かしてるんだよ。これこそコクのあるカレー。高級そのものだ!」とは、猿払村漁業協同組合の阿部専務理事

photo: 荒川健一
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