撮影=菊池陽一郎

うにのこと


  数にして百種類以上
ウニは棘皮動物という種類で、全国的に分布し、その種類は日本近海だけでも100を超えると言われています。ただ、食用としては、「バフンウニ」「ムラサキウニ」の2種に絞られます。大きさとしては、バフンウニが直径5cm程度、ムラサキウニが10cm以内ですが、50cm以上にもなる種類もあります。


  食用としてのウニ
我々が食用としているのは、卵や精子を作る、生殖巣という部分です。
夏が旬だというイメージがあるようですが、実はほぼ通年して楽しむことができます。ただ、産卵期になると卵や精子が生殖巣に含まれ、やや苦味が強くなるので、産卵期直前が食べ頃とされ、その時期(5月〜8月)が漁の最盛期でもあります。

 まずは、意外と知られていない、ウニについてのごく簡単な紹介をしました。
 そして今回は、ウニ達が水揚げされてから、どのような経路で、みなさんのお手元に届くのか「ウニの食卓までものがたり」と称して、名産地の北海道と、東京の加工場にお邪魔しました。
それでは、まずは工程の流れをご紹介しましょう。



春の訪れにはまだ早そうな北海道は千歳空港から、列車を乗り継ぐこと小一時間。
「小川商店」のある虻田郡洞爺湖町は、北海道南西部に位置し、豊かな自然景観に包まれた土地柄で、雄大に聳える有珠山からは洞爺湖を望むことができます。噴火山とは昔からゆかりが深く、2000年の有珠山噴火は記憶にも新しいです。湖岸には明治時代から続く、由緒ある温泉地もあり、観光の拠点としての役割も担っています。

ウニの食卓までものがたり

朝6:00ごろ。前日に水揚げしたばかりの新鮮なウニが、北方四島はもとより、北海道各地や、海外からも配送されてきます。重量にして、1日平均5トンとは圧巻。

トラックから降ろされたウニは、すぐさま、通称「ウニワリくん」という器具で、矢継ぎ早に割られていきます。なにせ1日に5トンも捌く訳ですから、さすがに手慣れています。

割られたウニから、スプーン状の器具で、身を慎重にすくいとります。

滅菌処理した海水で洗浄しながら、ピンセットで不純物を完全に除去します。

不純物を除去したウニは、さらに人工塩水で洗浄します。その繊細な配慮には感服しきりです。
ちなみに、ここで働くおよそ120名のほとんどが地元のパートさん。雰囲気はとても明るく、チームワークもとても良いそう。

そしていよいよ折詰へ。
緊張感のある空気が一気に場内を支配します。
ウニは、少しの衝撃でも破傷したり、溶けたりしてしまう非常にデリケートなもので、機械での作業は一切ありません。全てが手作業によって行われます。

食用として認可されたウニが、検品を済ませ、出荷をむかえます。一見しただけでも、それぞれの産地の滋味をふんだんに含んでいるのが、伝わってくるようです。

産地別のシールが貼られ、梱包後に出荷されます。ここまでの細やかな工程からも、すでに品質の良さは示されています。数時間後には、日本中の食卓でお会いできることでしょう。


ウニの需要が増えてからは、国産のシーズンだけでは賄えず、供給を満たすため、カナダやロシア、中国や韓国、チリなど世界各国からの輸入も、10数年前から常になりました。
流通手段の発達もあり、今では、信用度の高いウニが、各地から直送されて来ます。
「国内市場におけるウニの平常な機能の維持と供給が図られるようにと、諸外国のウニ資源の開発にも努めています。輸入することで、国内市場への安定した供給に貢献しています」とは小川商店さんの言葉。無論、産地に隔てなく、味そのものに大差はなく、「外国産の方が旨い」というお客様もいるほどだそうです。

北海道産ウニの旨さの秘訣としては、ウニが水温の低い所を好むことや、エサである昆布などの栄養素が高いことが要因とされています。



こちらで扱うウニは、カナダ、アメリカ、メキシコ、チリ産など海外が中心で、各地からほぼ毎日ウニが空輸されてきます。できるだけ新鮮な状態でウニをお届けできるよう、加工及び販売は365日体制。
米国にも出張所を構え、現地各提携工場へ、品質管理、生産指導など、丸喜さんのスタッフが、シーズン中に頻繁に出向き、納得したウニだけを買い付けてくるそうです。

「UNI」は世界中で通称されていますが、「sea urchin」とも呼ばれており、直訳すると「海のやんちゃ坊主」。坊主というと愛嬌がありそうですが、ウニをあまり食さない国にとってみれば、海草や昆布を食い荒らす「やっかいもの」とされているようです。食品としてのウニも、徐々に各国に浸透しているようですが、やはり摂取量としては日本が顕著。ただ、日本の水産業社が高く買い付ける事を考えれば、現地の漁師さんにとって、貴重な収入源である事は間違いないでしょう。

365日体制の加工工程

世界各地で水揚げされてから、なんと最短4日で届くそう。
温度変化にも敏感なウニは、冷凍にすると味が損なわれてしまうため、0〜2℃の一定温度で仮死状態にさせます。

ウニ専用のケースから、慎重に開梱され、各作業場に分担されます。
鮮度の劣化や、菌の繁殖を防ぐため、適度な水分を保持する特殊なシートに乗せられ、輸送されてきます。


 

ここでも機械には一切頼らず、100%手作業。
ただ、少しでも人間の体温に触れただけで、ウニは溶けてしまうため、専用の器具を用います。
細心の注意を払いながらの作業風景は、さながら、医薬品の調合をしている工場のよう。それだけ繊細な商品を扱っているという雰囲気が伝わってきます。
  出荷先ごとの注文に応じた計量を済ませ、いよいよ出荷。
下は完成品。その味たるや、舌に触れた瞬間に、濃厚かつ繊細な味わいと香りが広がってきます。




自信をもって提供
「ウニ=時価」というイメージは、今や昔。もちろん、高価な海産物には変わりませんが、昨今は、手頃な値で食べれるようになってきました。これはウニの味に大きな格差がある訳ではなく、世界中から旬のウニを、時期に関係なく供給できる流通網が発達したことにあります。
「回転寿司屋やファミリーレストランなどで出回っているウニに、妙な疑心を持つ方もいるようですが、決してグレードの低い品ではありません。安心してお楽しみいただけます」とは遠藤常務のお話。


photo: 菊池陽一郎
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