ピーター・フランクル◎数学博士。大道芸人。1953年ハンガリー生まれ。1971年国際数学オリンピック金メダル受賞。1979年フランスに亡命。各国で講演、研究を行うと同時に路上で大道芸を披露。1988年から日本に定住。ハンガリー学士院会員。算数オリンピック専務理事。日本ジャグリング協会名誉理事。日本語を含めた11カ国語を話し、これまでに60カ国以上を訪れている。「世界青春放浪記」「ピーター流らくらく学習術」など著書多数。
 僕の生まれはハンガリーです。ハンガリー人の食べている魚で一番多いのは鯉です。あと、ハンガリーには海がないので食用のものは川魚になるのですが、川魚としてはうなぎを良く食べました。うなぎの養殖もありましたし。それは日本にいるのと同じようなうなぎですが、蒲焼でなく串焼きにしたものが多いです。あと有名なのものに、日本語に直すと「漁師スープ」といわれるような、ブイヤベースのようなスープがあるんですが、僕は辛いものが苦手なのでそれにはあまりなじめず、日本に来るまでには魚をほとんど食べませんでした。でも来日してからは僕の健康志向もあって豚肉などよりもコレステロールが低い、魚が一番いいと思うようになりました。来日当時はお金がなかったので、そして今でも好きなんですが回転寿司によく行きました。数学者としてみると勘定の仕方がとても面白くて、一対一対応といいますか、どれくらい食べたかを残っている皿で数えるという所が面白いです。店によっては値段が違ったり、絵柄が違ったりという所も。日本に来たときには「時価より怖いものはない」といわれたことがあって、値段が書いてないレストランでは食べるべきではないといわれました(笑) 。
 ハンガリーの友人を普通の寿司屋に連れて行ったことがあって、それ程飲食していないのに2万円くらい請求されて驚いたこともあります。それに比べて回転寿司は安心して食べられるところがいいですね。来日と同時に本格的に日本語の勉強を始めて、その時に漢字の勉強も始めました。文化人としては何よりも「読む」ことが大切で、日本に来たら漢字を知らないから読めなかったんです。それで一生懸命勉強するようになり、その勉強法の中には寿司屋で食べた後、湯呑みをいただいて勉強するということもありました。そこには魚偏のついた漢字がびっしり書かれたものもあれば、日本を代表することわざが書かれているものもあり、とても勉強になりました。昔の寿司屋のネタは漢字で書かれてました。今では、お店に行ってもカタカナやひらがなでしか書かれていないことが多いけど、それは残念だと思っています。なぜなら、魚偏のつく多くの漢字は日本人の作った「国字」だからです。例えば、魚偏に交わると書いて鮫。でも中国語では沙魚と書く。「シャーク」を漢字に当てはめた「音」からきているんですね。日本人が作ったものだからもっと大事にしなければならないと思っています。魚に対する昔の人の知恵や観察力を尊重すべきなんです。教科書には全ての動植物の名前をルビ付きの漢字で書くようにした方が良いのではないでしょうか。カタカナは外国から入ってきたものの表記法ですから、やはり漢字で書いたもののほうが親しみを覚えると思いますね。

撮影=岩瀬陽一
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