ふじもとたかひろ◎俳優。1970年、福岡県生まれ。競泳日本代表としてソウル、バルセロナ五輪に出場。400m個人メドレーで10年間日本記録を保持。その後、劇団四季入団。「ヴェニスの商人」で初舞台。以後「エリザベート」や「リチャード3世」他多数の舞台に出演。ライブ活動や執筆活動、自ら作・演出の舞台を手掛ける等、多方面で活躍。来秋から3年かけて放送予定のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」で広瀬武夫役に抜擢され、現在国内外にて撮影中。
 もともと、あまり食自体に対して関心が無くて、3食フレークでもいいという派なんです。もちろんお魚は好きですけど、何が話せるかなと思っていました。そしたら、気づいたんです! 僕自身が魚だったってことに…
 水泳を始めたのは小学校2年生の頃。兄がやっていて影響を受けました。しかも当時はスイミングクラブ全盛期で。子供の頃から何かをやり始めると、それが最優先になるタイプで、途中で投げ出すのが苦手。だから何か他にあったんでしょうけれど、やり始めたからには、追求しなければならないと。やるからには負けたくないし、勝つためにやるという、水泳は勝負の場になっていきました。
 水泳選手として現役の頃は、毎日何万メートルも泳ぎました。時間にすると8時間ぐらい。で、寝ている時間も8時間ぐらい。半日以上がずっと横になっていますから、陸の上の生活が少なくなって、足腰がすごく弱くなりました。下半身が退化していくんですね、まさに魚のように。小学校6年生から中1ぐらいまではすごく運動神経がよかったんですよ。走るのも速くて、万能で。でも水泳がだんだん強くなるにつれて、球技だったり陸上だったりができなくなってしまいました。
 水泳を止めて、劇団四季に入ったのですが、バレエのレッスンとか、ジャズのレッスンとか、立ってすることはやはり難しかったです。横になってこういうのは(はいつくばるしぐさ)得意だったんで、キャッツをやれって言われればキャッツをやっていたという…(笑)。今でも下半身は鍛えています。水の中だと自由なんですけどね。誰にも負けないと思います。10km歩くより断然泳いだ方が楽ですし、何より落ち着きます。時々、泳いでいて、水の中で息をしなくてもいい日があったりするんです。いつまでも水の中に潜っていられる。そんなときはホントに魚の気分になりますね。
 昔、オリンピックなどで飛行機に乗るとき、驚かれたことがありました。われわれは、機内ではテーブルを出して、うつぶせて寝るんですよ。その方が楽だし、こうやって寝ることが当たり前だと思っていたから。そしたら、スチュワーデスが飛んできて「大丈夫ですか?ご気分が悪いんですか?」って心配してくれて。こっちも驚きました。でも、なぜうつぶせなのでしょうね? どうしても仰向けでは寝つけないんです。落ち着かなくて。これも魚現象なのでしょうかね?!(笑)。

撮影=三木麻奈 協力=ミミスイミングクラブ
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