鱧というと大阪か京都ですよね。夏になると、鱧の季節が来たという感じで必ず食べます。さっぱりとしているし、しつこくないし。高級といえば高級だけど、わりに普通の感覚。私の母が大好きだったので、自然と好きになっていました。だからいままでそんなに特別料理という感じがなかったです。でも家で簡単に鱧料理ってできませんから、家庭料理というイメージもないです。ただ料理人の腕ひとつでいかようにもなりますね。骨切りの技次第で美味しさも違ってくるような気がします。上手な人は骨を全く感じさせない細やかさで、軟らかくて。関西の味付けってもともと薄口でさっぱりで、おダシも透き通っていて繊細なイメージ。そういう意味で鱧は合うんでしょうね。身が白くてきれいだし、切り方も繊細だし。私は夏でも鍋とか熱いものが好きだから、鱧しゃぶが一番好き。お酒も進むし(笑)。大概、鱧って繊細なものだからメインというようなどっさりというイメージはないけれども、鱧しゃぶはパクパク食べちゃう。その点ではすごく贅沢ね。鮎も好きですけど、やっぱり季節のものをそのいい時期に食べるっていうのがいいですね。旬の美味しいものは最高に美味しい。でも、いろいろなところで美味しいおさかな料理をいただきますけど、以前、和歌山で船に乗って、その場で捌いて食べさせてもらいました。でも、すぐに食べて美味しいのはおさかなによるんだなと。獲りたて=美味しいって思っていたけれど、なんとなく味がないような気がしました。もちろんフレッシュなのがいいと思いますが、鮮度と旨味ってまた別の話なんだなと思いました。
 自分でもお料理はしますけど、私のは簡単料理。まずテーブルコーディネイトして、そのお皿に何を入れるかを決めていく。中身が後で、見た目が先なんですよ。お皿のストーリーをまずつくるんです。それからそのお皿に合うお料理を考えます。プロセスが逆なんです。でもあくまでもお料理が主役。「美しい味」と書いて美味しいでしょう。見た目がよくないと美味しそうに見えない。だから簡単料理なんだけど、一見お料理屋さんから届けられたのかしらって思うような見せ方をする。鱧でも、例えば鱧寿司を買ってきたらそれをたくさん出すのではなく、一切れをちょこっと。もうちょっと食べたいという方が美味しく見えますよね。私の場合、どちらかというと生き方が「余白の美」だから埋め尽くさないんです。バランスを見ながら引き算をする。引き算しすぎてもおもしろくないけれども、まずゴージャスに盛るってことはないですね。私は全部が見た目重視。なんでもデザインです。
こしのじゅんこ◎東京を拠点として活動。1978年〜2000年パリコレクション参加。1985年に北京、その後はニューヨーク、ベトナム、ポーランド、キューバ、ミャンマー等でショウを開催。2006年「イタリア連帯の星」カヴァリエーレ章受勲し、2008年には、VISIT JAPAN大使大使、上海万博大使に任命される。オペラやブロードウェイミュージカル、舞台衣装、スポーツユニホーム、インテリアデザインまで活動は幅広い。
撮影=緒方栄二
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