魚、と聞いてまず頭に思い浮かぶのは釣堀、だろうか。昔住んでいた杉並区の家から歩いて、確か10分くらいのところの4面ほどの釣堀。おやじに連れられて毎週日曜に行っていた記憶がある。けっこう人は多かったなあ。子供のくせに飽きなかったのか、と言われれば、確かに飽きていたかもしれない。でもいっちょ前に竿を一本渡されて、子供なりに楽しんでいた記憶もある。釣れる確率はたいして高くなくて、何も釣れずに、ただ時間を損したような気になって終えるときもあった。どちらにしても帰りがけに、そこで鯉だの鮒だの金魚だのを買って帰る、というのがルーティーンだった。おやじとしては、釣ることよりもそっちのほうが楽しみだったような気がする。ときどき、えらく鱗の大きな鯉がいて、それはちょっと高くて、そんなものを買ったときにはけっこううきうきした。うちの実家は地主だったこともあり、敷地はけっこう広く、池には橋がかかっていた。などと言うと、ものすごいお屋敷を想像されるかもしれないが、そんなたいそうなものではない。子供だから大きく見えただけで、たぶん、全長でも10メートルはなかっただろう。僕は釣堀で買ってきた魚をそこに逃がす瞬間が一番好きで、その役を進んでかって出ていた。 |
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