かつては多く存在したたいらぎ漁船も高松港では1隻のみ。高松市東部漁業協同組合の組合長・片岡圭三さんの船がその唯一です。いまは義理の息子さんが4代目を継ぎ潜水漁を続けていますが、とにかく命懸けの仕事。  通常たいらぎは水深10〜30メートルの海底の砂泥地に、とがった方を下にして突き刺さるように埋まっています。しかも出ているのはほんの数センチ。それを見逃すことなく、潜水士の資格を持った漁師が歩きながら、ひとつひとつ手かぎで海底から抜き取り、捕獲します。漁師は一度潜ったらほとんど潜りっぱなし。獲るのは約2〜3年もので、漁場を探りながら網がいっぱいになったら揚げる、をくり返し、8時から13時頃まで続けます。その間、船長は潜水する漁師の空気泡と水深を確認しながらゆっくり操舵を続けます。そして、船上では約10分ごとに揚がる貝を、開けて、身を外して、貝柱とその他を分けて、貝柱をきれいにして、機械で殻を砕いて海に戻す、の作業を素晴らしいチームワークで進めて行きます。
 漁期は12月から4月まで。2月から3月がピークだそうで、海の冷たい時期になると貝は自ら顔を出してくるそうです。出漁は潮汐表を見て決定されますが、1週間漁に出ると、その後1週間は休みというシステム。温暖な瀬戸内海とはいえ寒風の中での過酷な作業。漁獲高も限られるため、この大変さを考えると高級食材であるゆえんに納得します。
▲ 潜水服を3人がかりで着せて、30kgのおもりをつけて潜水開始。
▲ 空気泡を確認しながら操舵。ときどき漁師と無線で交信。
▲ 約10分間隔で、いっぱいになった網が揚がります。船上での作業は手早く進行。
▲ 貝を開くとこんな感じになっています。 ▲ 貝柱の薄皮をむいてきれいにします。
 漁師は相当な圧を受けています。水中と地上の圧の変化で生じる潜水病を避けるために、たいらぎ漁船ならではですが、直ちに船艙に装備した減圧室に入り数時間かけて調整します。
 他のメンバーは港に戻ると潜水装備を水洗いし翌日に備えます。と、同時に出荷作業。出荷はおもに貝柱のみで、サイズ別に1キロ単位で袋詰めにし、香川県漁連を通して、中島水産へは送られて行きます。

←奥に見える長いケーブルが空気を送る管。ヘルメットに接続されていて同時に命綱でもあります。

港内にある東部漁協直営の食堂。シーズン中は獲り立てのたいらぎが食べられます。
香川県高松市本町103─5
TEL 087─821─4155/090─9450─9004
営業時間:11時〜14時 定休日:日・祝


撮影=菊池陽一郎
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