子供の頃、共働きの両親との待ち合わせ場所が銀座のソニープラザだったんです。雑貨好きのスタートはその頃。高校を出たらすぐに一人暮らしを始めてアメリカの製品に囲まれて生活していました。大学生の頃、漠然とお店がやりたいなと思って、横浜をふらふらとしていたら、ブリキのおもちゃ博物館の館長・北原照久さんの一年中クリスマスというコンセプトの店と出くわして、いままでそんなお店を見たことなかったから衝撃を受けて働いてみたいなと声をかけたら、ちょうど北原さんの奥さんがいらして、働くことになりました。自分が経営する際にもためになると思って。すると2年ぐらい経ったら、シュークリームの店を出すから店長として行ってくれと言われ店長を務めました。1号店が成功すると2号店の店長にと恵比寿にやって来たんです。それで代官山が近いから徘徊するようになって、ちょうど「アッサンブラージュ」ができた頃で、今回ご紹介したボンポットをつくっているフランスのエミール・アンリ社の代理店をしていたので、また飛び込みで働けないか聞いたらオーナーがいて、営業としてならと転職しました。そこから料理道具にのめり込んで行きました。その間にお店の方とかメーカーさんと親しくなって料理会をやったりして、料理と道具というようないまの礎ができました。フリーになると、次は料理道具のレシピ本があってもいいんじゃないかと出版社に売り込みに行きました。幸い実現し、それが名刺代わりとなって料理道具を専門にする仕事が増えて行きました。
 今回選んだのは実際に使っているものばかり。ボンポットはフランスのブルゴーニュでしかとれない魔法の石と呼ばれる土を使っていて、マイナス20度からいきなり熱いオーブンに入れても大丈夫と言われているんです。電動ミルは3歳の息子が大好きで、オクソーのフードミルとともに自分のおもちゃにしています。オクソーはおもちゃからアイデアが来ているので小さい子でも使える=使いやすいんです。
 料理は和食が好きで魚が7割ぐらい。妻が香川出身なので、息子のためにもと義理の両親が瀬戸内の魚を送って来てくれるんです。食べたことのない魚とかもたくさんありますし美味しいですね。毎回わくわくしています。共働きなので、私が平日主夫をして妻が休日を担当していますが、妻には、食に携わる仕事をしているんだから主婦目線になれって言われていて。男の料理は価格は関係なく好きなものをつくるけど、主婦は経済的なことを意識するのって。がんばっていますけど、主婦の感覚って難しいですね。
あらいやすなり◎1968年東京生まれ。洋菓子店長、和陶器店主を経て、仏陶器エミール・アンリ社の日本代理店立ち上げから11年間営業リーダーとして勤務。以後フリーで執筆、料理道具コンサルタント、学校講師を務める。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)。ELLE onlineにてコラム「ELLE a table〜ツールハンターYASUが語る、道具の美学」連載中。http://www.araiyasunari.com
撮影=三木麻奈
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