本年3月の日経新聞朝刊に、表題のような見出しを発見しました。「和食ブームに乗って、日本の農林水産物や食品の輸出が増えているが、そのけん引役は高額品であり、和食輸出の浸透には様々な課題が残されている」といった記事です。私も、香港の高級スーパー等で、日本人が現地のお客様に一生懸命フルーツを売り込んでいる光景をよく見ていましたが、ちょっと気になっていろいろ調べてみました。
 昨年一年間で、農林水産物の輸出が初めて6,000億円を超えたようですが、水産物を見てみると、高級中華材料でもある「ホタテ貝柱」「乾燥なまこ」、それに「真珠」という高級水産物が34%を占めており、それに「マグロ(ほとんどがフレッシュな生の中トロ・大トロ)」を加えたら、なんと全体の40%を超えているのが実態であり、高級食材に支えられての増額であることがハッキリしています。
 農産物でも、メロンやイチゴのような高級フルーツを、香港や台湾というアジアでも裕福な国々への輸出で増額させていることが統計上出ています。マスコミではいろいろ騒がれていますが、実態はそれほど順調にアジアへの農林水産物の輸出が拡大しているとは思えないのです。アジアの富裕層にのみ大きな支持を受けているだけで、裾野はまだまだ広がっていない状況だと思います。冒頭の日経新聞の記事では、中価格品や低価格品が広がっていないことを問題視しているように理解しました。
 日系の外食企業のアジア進出も、盛んに報道されていますが多店化に苦戦しているようなので、各社の状況を調べてみましたが、華々しい出店報道とは反対に、業績が順調なチェーン企業は数えるほどしか無いようです。
 先ほど述べたように、中価格帯・低価格帯では苦戦しているようです。和食を高級なイメージで、多店化を目指さず、じっくり腰を据えているレストランで成功している店は独立店ではいくつもあります。中価格帯・低価格帯で成功しているチェーンレストランは、地域の消費者の収入を考慮した価格設定なり、地域の味覚に合う商品を躊躇せずに、利用出来る価格で提供出来ていることが共通点だと思います。日本の判断基準での展開をしている企業では、中々現地外食企業に対抗することは難しいようです。農林水産物でも同様で、高級品のみを対象にしての輸出には限界があるように思います。
 弊社海外事業各社は、各国のパートナーとともに、寿司を中心した魚を一般のお客様に対して、その地域の所得水準を考慮した価格と品質で提供しております。海外事業をシンガポールで始めてから22年が経過し、現在5ヶ国、80を超える店舗の展開をし、大変多くのお客様にご愛顧いただいております。これからも、日本だけの基準ではなく、各国の味覚、労働環境、様々な制約等を考慮した上で、更に多くのお客様にご評価いただくような提供を心掛けて参ります。海外で「中島水産」の看板をお見かけになりましたら、お気軽に声をかけていただきますよう、お願い申し上げます。
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