「機能的でデザインはすっきり」がマスト
 基本的にキッチングッズは機能的でデザインがすっきりしているというのがマスト。だから今回提案したものもそういう視点になってしまって……、色がないですね(笑)。
 とくに鍋はストウブとかの鋳物ホーロー鍋が好きで、スキレットもそうですけれど、日常のちょっとした料理でも、熱の通り方とか水の回り方とかが全然違うのですごく楽なんです。何品かをつくるとき、具材を入れて火にかけ、ときどき様子を見るだけでいいんです。多少値段が高くても持つ価値は十分にあります。しかも、我が家はコンロが2つしかないんですが、放置していても冷めない。料理の段取りを助けてくれるので重宝しています。スキレットも普通の野菜炒めがすごくうまくいくんですよ。お茄子を食べやすい大きさに切って火にかけるでしょ。5〜6分でいい感じに火が通り、焼き目もつき、塩こしょうとオリーブオイルだけでばっちり。お芋もローズマリーとお塩とオリーブオイルだけでほくっと仕上がるんです。
 調理道具は昔から欲しくて手に入れたものもありますが、例えばスキレットは『AERA』で連載を持っていたときに、ルノワールという画家が南フランスに暮らしていたんですけど、よく家の外で炭火焼みたいなのをやっていたという記述が残っているんです。私は画家の食の研究をしているので、日記とか手紙とか手稿の中から食について書かれている部分を引っ張り出して、こういう絵を描いている人がこういう暮らしをし、こんなものを食べていたということを紹介して、画家の人となりを身近に感じてもらえれば、絵に興味を持ってもらえるかなと思って研究しているんですね。それで、ルノワールの炭火焼を再現するのに、イメージするものを求めていろんな料理器具やさんを回って、最後に行き着いたのが意外や、アウトドアショップ。最初は撮影用だったんですけど、すごく使い勝手がよくて愛用するに至ったという感じです。
 いい道具って、使うと気分が高揚するし、料理がしやすい萌え感がありますよね(笑)。
はやしあやの◎キュレイター、アートライター。美術館での展覧会企画、美術書の企画、執筆を手がける。新しい美術作品との出会いを提案するために画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食への趣向などを研究、紹介。著書『フェルメールの食卓』『モネ 庭とレシピ』『浮世絵に見る 江戸の食卓』など.
撮影=中本佳材
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