私、おさかなが大好きなんですよ。私の家族は引揚者でね、最初は母の里がある新潟に引き揚げて、「板倉村」という山の上にある村落で、お天気のいい日にはずーっと下の方に海が小さくまあるく見えるところ。いとこに「ねぇ海って学校のお庭より広いの?」って聞かれたぐらい。そんなもんだから、おさかながなかなか手に入らないの。ときどき、行商の人が登って来て、塩サバが手に入るんだけど、ものすごいご馳走だったの。そのあと、父が静岡で医院を開業するまで無医村をあちこち転々としたのね。なかでも舞鶴は海が近いから魚が豊富だった。必ずお正月にはブリ。たいへんなご馳走だったの。いまのステーキぐらい(笑)。だけど、あるとき、ちょっと目を離した隙に盗まれちゃってね。みんな楽しみにしていたから母は泣いちゃって。そういう時代だったのね。あと失敗といえば、母が私におさかなの3枚おろしの仕方を教えてくれたの。アジだったと思うんだけど、東京に出るちょっと前、13歳ぐらいだったかしら。結構簡単だなって思って、ちゃんとお刺身になったのよ。それが、母が何かの用で座を外したのね。そうしたら、その間に私ったらお刺身を洗っちゃったの。母が戻ってきて「お刺身を洗うバカがどこにいるの!」って言われちゃった(笑)。 好きな魚はイワシ、サバ、ブリ、あとムツが大好きだったの。そのムツがメロって呼ばれていまは高級魚になっちゃったわね(笑)。静岡の家の角のお店には、焼津で獲れたてのしらすが毎朝売っていて、すごく美味しいの。それから、「黒はんぺん」のフライが私はすごく好きだった。ラジオのお相手した伊東四朗さんもこのはんぺんが大好きで、静岡を通ると必ず買って帰るって…(笑)。あと、「へしこ」ね。イワシとかサバのぬか漬け。味はちょっとアンチョビに似ていて、大好き。東京でもときどき売っていたのよ。 タモリさんの最初のヨットに乗せていただいたことがあるの。疑似餌をつけた長い糸を船のうしろに結びつけて流しながら船が進むと、必ず魚が釣れて、タモリさんがその場でさばいてくださり、お味噌汁なんかも全部タモリさんがつくってくれて、それがみーんなすっごく美味しいの。私たち食べるだけ。素敵なヨットでね。美味しくて楽しくて。海の沖の色ってすごいってはじめて思ったわ。ビロードのような黒青で、忘れられない色ね。あら、おさかなだけでいろんな思い出がいっぱい出てくるのね(笑)。そうそうヨットの名前はね、「笑猫」って言うのよ…。 |
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