わたしの好物ベスト3の中に、お刺身がある。とりわけ
エンガワには目がなく、家族で行くお寿司屋の大将には、
“エンガワ姫”と呼ばれるほどだった。と言っても“カレイ
派”だから、安あがりの姫だ。
 幼い頃は大の野菜嫌いで、フルーツのおいしさもわから
なかった。母はあの手この手を尽くし、ある日、「お刺身
だよ〜」と言って、短冊状にスライスしたアボカドを食卓
に並べた。食べてみると見た目よりおいしく、濃厚でクリ
ーミーな旨味はどこかエンガワを彷彿させた。完全にお刺
身だった。まんまと母の手中に収まったわたしが、アボカ
ドをフルーツと知るのは小学校にあがってからだ。    
 中学卒業後、留学を含め海外生活は足掛け10年を過ごし
た。そんな折、心身のバランスを崩したことがきっかけで、ヴィーガン生活(菜食主義)を始めた。6年ほど肉や魚などの動物性食品は一切摂らず、同時に様々な食事法や断食も実践した。
 ヴィーガンをしていると、「なに食べてるの?」「毎日サラダ?」と、よく聞かれた。残念ながら、そういったイメージを持っている方は多いかもしれない。実際は、工夫次第で多種多様の料理をつくることができる。料理好きが高じ、いろいろなヴィーガン料理に挑戦した。なかでも手巻き寿司は十八番でよくつくった。大豆ミートを豆乳マヨネーズと和えた“ツナマヨ風”。豆板醤と梅干しで味付けしたアマランサスはプチプチとまるで明太子のようだ。スライスしたエリンギはソテーすると味も食感もアワビそっくりになる。そんな“もどき料理”の創作はとても楽しく、制限から、豊かさと可能性を見出せた気がする。
 最近は、“なんでも食べる、時々ベジタリアン”(フレキシタリアンというらしい)のスタイルを取るようになった。“自分の心地良さ”を大切に、より幅の広がった食生活をゆるゆると楽しんでいる。
 いままでも、そしてこれからも、アボカドのお刺身は間違いなくわたしのソウルフードだ。

たら◎モデル
5才よりバレエをはじめる。ヒューストンバレエUの研修を経て、チェコ、クロアチアの国立劇場でソリストとして踊る。2016年、拠点を日本に移し、モデルとしての活動をスタート。認定トレーナーであるジャイロトニック(R)・ジャイロキネシス(R)の指導、バレエ講師、ヴィーガン・グルテンフリー料理のレシピ開発、ケータリングイベントへの出店なども行っている。 

 

 

 

 

 



写真提供=ナチュラン( photo:Wakako Kikuchi/Hair&Maik:Ayumi Ueki )
lllustration=森野エスカルゴ
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