入門は父親が反対してました。落語は男社会だし、修行で五年もかかるし、甘い世界じゃないと。そもそも大学に行っていたので、何のために大学に行かせたんだと、すごく怒っちゃったので、説得しないで始めました。いまは応援してくれています。
 もともとは女優をやりたくて活動してましたが、大学入学前にアメリカに二年ぐらい留学してた時期がありました。その際に海外の友達に日本の文化のことを色々聞かれたんですけど、答えられなかったんですね。「日本の文化って何なの?」って言われた時に、なんだろうって、それがすごく恥ずかしくて。やっぱり海外で勉強するよりも、日本に帰って日本の伝統芸能に携わりたいと。で、何をやろうかなと思った時に通っていた学校にうちの師匠(金原亭世之介)が講師としていらっしゃっていて、そこで初めて落語を聞いて「これがやってみたい!」と思って志願しました。
 けれど、よくまだわからない世界に長い修行時間を費やすことや、その厳しい世界でやっていけるのかとか色々思ったら怖くなって。一回心が折れそうになって「やっぱり辞めます」って師匠に言った二、三日後に、渋谷駅のホームでばったり師匠と遭遇。偶然の再会に縁を感じ、改めて弟子入りをしました。
 前座まではまだ噺家として一人前ではなくて、高座に上がるのも時間外(料金外)なので、そこで勉強させていただくという感覚です。二つ目からは羽織を着れるようになるのと、楽屋に一日中いて修行するということがなくなって、料金内の時間に高座に上がって一人前としてやっていけるという感じです。
 二十歳過ぎてから焼き魚が食べられるようになりました。小さい時に骨が喉に引っかかったことがあって、痛くて取れなかった思い出がずっとあって…。でも生魚は昔から好きでよく食べてます。中でもサーモンがすごく好きで、小さいころお寿司屋さんではサーモンばかり頼んでました。
 いま身長が163センチあるんですけど、中学生の時は153センチくらいで体重は今より14キロも多くて、クラスで二番目のデブって言ったら私だったんですよ。
 その時はお寿司が好きすぎて大食い選手になりたいと思ってました。テレビでギャル曽根さんたちを見ていて、食べて仕事になるならすごい幸せだと思って。
でも、中学校二年生の時に初恋をしまして、それでダイエットをしたんです。14キロ落としたら、成長期で身長もガッと伸びて、びっくりしました。痩せて伸びたんで、学校の先生がすごい心配して(笑)。結局、告白してフラれちゃったんですけど、痩せて本当に良かったなと思いました。
 いまの季節おすすめの噺は「目黒のさんま」です。いろんな師匠のそれぞれ好きなところはありますが、やっぱり男性の噺家とは違うので、自分がこうなりたいとは思わないです。いま古典をやっていて、女性だからここは言わないほうがいいとか工夫しながら落語の女性の登場人物が素敵に見えるように演じています。古典を女性がやっても聞いてみたいねってなるようにできたらいいなと思います。女の人がやるとそれはまた別のものとしていいね、というような新作も作ってみたいです。

きんげんていののか◎噺家/1994年生まれ。2016年東洋大学在学中ミスコン審査員特別賞などを経て金原亭世之介に入門。女子大生落語家「巷を賑わせる美しすぎる落語家」として話題となる。2017年前座の初高座、2019年前座で在りながらCM抜擢、Beats by Dr.Dre CM「ワタシたちが、新色。」に出演。その後も日テレ沸騰ワード10などTVや紙面を賑わす。2020年11月1日鈴本演芸場を皮切りに二つ目昇進披露。今一番輝いている噺家。

 
photo:Miyoko Tamai logo:Bason Ryoichi interview:Mariko Sakaguchi
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