“豊かで心地よい暮らし”を掘り下げたい

 衣食住、暮らしまわりのことには20代の頃から関心がありました。その頃から一貫して、つくり手の温もりや物語を感じることができる作家モノが好きですね。実際に作家の方が創作されているモノづくりの現場を見たくて、地方に足を運ぶことも度々あるんですよ。ピジョンカップの鈴木環さんの作品とは、私の両親が最初に秋田のギャラリーで出逢いました。それがご縁で長いお付き合いをさせていただいています。
 愛用してる器は割れてしまっても金継ぎをしながら長く使っているものもあります。なじみの金継ぎ師の方にお願いすると、「どこで購入しましたか?」「どうやって使っていましたか?」などと細かくヒアリングしていただき、しばらくすると、まるでアート作品のような素敵な逸品になって戻ってくるんです。そうするとまたいっそうその器に愛着が湧きますし、共に時を刻んでいるという感動を覚えますね。
 新しい情報を広くカバーするより、限られていても本当に気になること、心が惹かれることを深く掘り下げる方が性分に合っているのかもしれません。世の中のスピードとは異なるかもしれませんが、実はとても豊かなことだと感じるんです。私自身がデザイするプロダクトにもそうしたタイムレスな価値観をプラスできたらいいなと思います。
 普段の食事は、断然お魚派! お刺身や牡蛎が大好きで、一人でお寿司屋さんに行くこともあるんです。家ではサバやカレイの煮つけ、誰かをお家に招くときはアクアパッツアなどもつくりますよ。焼き魚も好きです。グリルで焼いたり、オーブンでたくさんの野菜と一緒に手軽に火を入れたり、普段からよくいただいています。
 自由が丘に2店舗あるうちの「ハグ オー ワー」という店名には、英語で「綱引き」を表わすと同時に「ハグをしましょう」という意味を込めました。もうひとつの「クロス&クロス」の方には、「服(clothes)」と「交差する」という二重の意味があり、私が心地よいと思う暮らしのあれこれを共有していただける方々が、お互いにハグをするような気持ちで交流してくださればとても嬉しく感じます。

まさき◎モデル、デザイナー。秋田県出身。マガジンハウス『anan』でモデルデビュー以降、雑誌、CMなどで活躍。現在は東京・自由が丘に上質で着心地のよいレディースブランドの店「ハグ オー ワー」と大人のための衣食住を提案する店「クロス&クロス」の2店舗をプロデュースし自らデザイナーを務める。丁寧な暮らしぶりも人気で、ライフスタイルを綴った著書も多数。  公式WEBサイト Instagram


取材=中島宏枝 撮影=行竹亮太
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