日本二百名山に選ばれた暑寒別岳(しょかんべつだけ)を背に、
日本海側に面した、北海道北西部の小さな町、増毛(ましけ)。
この地に揚がる甘えびは、実に甘くて濃厚。
新鮮で美味なる甘えびが、
いかに細やかに丁寧に届けられているかを取材してきました。
増毛燈台からの増毛港を望む。
奥が留萌(るもい)方向

 石狩から天塩までの海岸線、通称オロロンラインの代表味覚「甘えび」。北海道で甘えびが獲れるのは、今回取材に行った増毛と、羽幌、余市の3か所に限定されます。
 一般的に通年で漁獲されるえびですが、3月1日から11月末までの9か月間はカゴはえ縄漁で捕獲。増毛には6隻のえびカゴ漁船があり、出航は常に一斉。一団で向かいます。漁場までは片道3〜4時間、40マイル(約70キロ)の沖合。1隻につき6〜7人の乗組員で構成され、各自フル稼働です。
 そのカゴ漁のカゴは1隻につき約2000個の使用が許可されていて、1本のロープに333個を設置し、その状態のものを6本、海に放します。
 漁はカゴの設置からスタート。翌日からは丸一日、仕掛けたカゴを引き揚げて、船内で4等級別に分けて、それを船底の水槽に入れて、空になったカゴを海に戻すという作業をくりかえします。
入口の傍の袋に仕掛けたにしんやスケソウダラ(えさ)に釣られたえびが入口から入るしくみ。
出にくい構造になっている
船底は水槽になっていて、等級別ケースごと水の中に
 港に戻ってくると、船倉から水揚げをし、隣接の市場へ移動。甘えびは生きたまま。そこで、1箱約3キロで、発泡スチロールの箱に詰めていきます。船内ですでに等級別に仕分けていますが、入念に最終チェックをして、保冷環境を整えて、午前8時の入札に備えます。乗組員らは、のんびり休む間もなく再び沖へ向かいます。
お話を聞いた「新生丸」を率いる太田勝司さん

1. 約3.3kgを計る
2. 計ったら氷を敷き詰めた発泡スチロールの箱に入れる
3. 平らにならし、保冷シートを入れてふたをする
4. 念入りに最終チェック。サイズ違いは外す
5. すべてクリアして完成
作業はつづく

正式名称ホッコクアカエビ通称甘えびは鮮やかな朱色から、またの名を南蛮えびと呼ばれています。最初は性別はすべてオスで、途中で性転換を行いメスになるんだとか。甘えびの寿命は約10年と言われ、その間に3回ほど産卵をします。春から夏にかけてが産卵期で、脱皮も同じ頃。甲殻類は脱皮によって成長するわけですが、脱皮直後の甘えびは殻が柔らかく、色も若干白っぽくなります。しかし味はまったく変わらないのでご安心を。
上が脱皮前、下が脱皮後
 中島水産の甘えびはぐるめ食品が入札。自社工場に運び込み、10時発の航空便のトラックにのせるため、配送用梱包にします。
 翌日には店に到着。鮮度の高い甘えびが最短2日でお手元に届きます。
ベルトコンベヤーを利用して流れ作業で
氷が直接当たらないようにシートをかぶせる
シートの上に氷を敷き詰める
特大サイズ、1箱3.3kgが2箱セットになって出荷

 増毛に歴史あり!! ぐるめ食品
増毛は北前船の町として江戸時代から栄え、昭和初期にはにしん漁が盛んでした。それは昭和30年代まで続きましたが、戦後、三越はにしんを本社へ送るために増毛水産事業所を新設。それがぐるめ食品の前身です。それ以降水産品を多数取り扱い、甘えびはもちろんですが、加工品として村井良泰社長がお奨めする国立循環器病研究センター認定「かるしお」減塩たらこは素材の旨味を引き出し驚きの低塩化を実現したそうです。(中島水産店舗にて一部取り扱い有り)

「ましけ」という名前の由来はアイヌ語の「マシュキュニ」から。かもめのいる町という意味だそうです。

映画のロケ場所として数多くの作品が撮られています。なかでも高倉健主演の「駅 station」(1981年)は有名。ここに登場する「風待食堂」は現在観光案内所として健在です。

2016年12月で廃線となった留萌線終着「増毛」駅舎はぐるめ食品直売所に。できたてたこザンギは美味!

フランス料理人として名高い、三國清三氏の出身地でもあります。

魚介類だけでなく、最北の酒蔵と言われる「国稀」があり、果物園が多く広がり、まさに「増毛は美味しい」町なのです。


撮影=菊池陽一郎 取材協力=北海道TM株式会社
Copyright (C) 2017 NAKAJIMASUISAN Co., Ltd.